膠原病専門外来について

膠原病専門外来について


福井大学附属病院の皮膚科では、膠原病専門外来を開設しています。毎週火曜日の午前中で完全予約制です。診察医は、基本的に膠原病を専門とする長谷川 稔教授です。

 

対象となる患者さんは、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、皮膚筋炎、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、結節性多発性動脈炎などの血管炎、成人スティル病、ベーチェット病など、皮膚に何らかの症状を持たれている膠原病やその類縁疾患の方です。長谷川教授は、もともと金沢大学医学部皮膚科で全国の強皮症をはじめとする膠原病患者さんを沢山診察してきました。2013年に福井に赴任しましたが、今後は全国から患者さんが沢山集まる専門外来を目指しています。

 

診察を希望される方は、前日までに福井大学附属病院(平日8:30~16:30頃までに個人の方は0776-61-3111(代)から皮膚科外来へ、また医療機関から御紹介の方は地域医療連携部0776-61-8451)までご連絡いただき、予約をとってから受診してください。


全身性強皮症

1.病態と症状

 全身性強皮症は、中年の女性に発症することが多いのですが、男性、小児、高齢者にも発症することがあります。その原因は不明ですが、遺伝性の疾患ではないものの、発症しやすい体質のある方が、何らかの環境因子によって誘発されて発症すると考えられています。

 この疾患は、組織の線維化という変化により、その名前のように“皮膚が硬くなる”病気です。しかし、その程度は、手指が少し腫れぼったいという程度の皮膚硬化の軽い方から、全身の皮膚が硬い重症の方まで患者さんによって様々です。ただし共通しているのは、手指からほぼ左右対称性に硬くなってきますので、おなかから硬くなったとか、右腕だけが硬くなるという場合はこの疾患ではありません。指の皮膚硬化は必発ですが、肺、消化管、心臓などの内臓臓器にも線維化がおこる方もおられます。

 また、この病気のもうひとつの特徴は、血管障害がみられることです。ほとんどの方にレイノー現象と呼ばれる手指の血流障害が認められます。これは、冬などに手が冷えると指が真っ白になり、その後、紫色、赤色などに変化してもとにもどるという現象です。その際に、手指にしびれ感を感じる方も少なくありません。強皮症患者さんではレイノー現象が通常最初にみられる症状ですが、皮膚硬化のはっきりしないこの時点でも、自己抗体などを調べることによって早期に診断することが可能です。ただし、レイノー現象は強皮症が一番高率にみられますが、他の膠原病や膠原病以外の方にもみられることがあります。血管障害が進行すると、手指の尖端に潰瘍が出来たり、肺や腎臓などの血管にも病変を起こす方がおられます


2. 診断

 手指だけでなく手背まで皮膚硬化がみられ、他に皮膚硬化を起こしうる疾患が除外できれば、全身性強皮症と診断されます。ごく早期あるいは軽症であるために、指だけが腫脹している、あるいは硬化しているという場合には、血液中の自己抗体や他の皮膚症状、内臓病変などから総合的に診断されます。強皮症の方では、血液中にこの病気の患者さんでしか通常検出されない抗体が見つかります。代表的なものに、抗セントロメア抗体、抗トポイソメラーゼI抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体があります。抗セントロメア抗体陽性の場合は、生涯にわたって皮膚硬化や内臓病変は軽症ですが、まれに肺高血圧症を生じる方がおられますのでこれには注意が必要です。体を動かすとすぐに息切れがするという症状ですが、初期には無症状です。年に1回心臓のエコーを受けていただくと早期に発見できますので安心です。抗トポイソメラーゼI抗体陽性の方は、皮膚硬化が四肢だけでなく体幹にも拡大する方も少なくなく、間質性肺炎(肺の炎症・線維化)などの内臓病変も高率にみられます。間質性肺炎が進行すると呼吸不全をきたして命に関わるので、この抗体が陽性の方はしっかりと治療を続ける必要があります。抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性の方も皮膚硬化が重症のことが多いのですが、間質性肺炎はそれほどひどくありません。ただし、腎クリーゼ(突然血圧が上昇して急速な腎障害を生じる病態)の頻度が高いので、ふだんから血圧を測定して、急な血圧上昇がみられた際にはすぐに医療機関に連絡しましょう。


3. 治療

 残念ながら、今のところこの病気を治せる薬はありません。生活上の障害を残さないように、症状の進行を抑制する治療と症状をやわらげる治療を組み合わせていくことになります。以下に一般的な治療を記載しますが、私たちの専門外来でもこのような治療を行っています。また、強皮症の新規治療に向けて強皮症のモデルマウスを用いた研究を進めており、他の施設や研究所とも連携して、いくつかの新薬の開発に取り組んでいます。

 皮膚硬化の治療:強皮症では、皮膚硬化の程度が強いと関節の曲げ伸ばしにも影響し、関節がそのまま固まってしまって、指などが完全に伸ばせないようになってしまいます。そうなると、生活上の支障が生じたり、曲がった部位に潰瘍が出来やすくなりますので、皮膚硬化の治療目標は、関節の拘縮を残さないことです。このため、指や手背、前腕までの軽い皮膚硬化の方は治療の必要がないのですが、上腕や体幹にも及ぶような場合は、ステロイド(プレドニン15mgくらいから開始してゆっくりと減量)の内服治療が必要になってきます。

 間質性肺炎の治療:放置しても生活上問題ならない軽症例は治療の必要がありませんが、放置すると呼吸不全に至る可能性がある場合は早めに治療を行う必要があります。具体的にはステロイドの少量内服を続けながら、シクロフォスファミドという免疫抑制薬のパルス療法が行われます。

 肺高血圧症:以前は一旦生じると致命的でしたが、最近では新しい薬がいくつか出てきており、生命予後が改善してきました。エンドセリン受容体拮抗薬、PDE5阻害薬、ベラプロストナトリウムの徐放薬などが使用されます。

 腎クリーゼ:強皮症の他の症状が非常にゆっくりと進行するのに対して、これだけは急速に進行して放置すると腎不全に至ります。早急にACE阻害薬と呼ばれる血圧降下薬の内服を開始し、血圧を下げることで進行が防げます。

 逆流性食道炎:プロトンポンプ阻害薬などの内服が有効です。

 レイノー現象、指尖潰瘍:体全体や手足の保温に気をつけるのが大事ですが、治療としてはベラプロストナトリウムやトコフェロールニコチン酸の内服、プロスタグランジンE1の注射などが行われます。また、難治性の潰瘍を繰りかえす方では、エンドセリン受容体拮抗薬のボセンタンが潰瘍予防に有効です。

 生活上の注意:禁煙は厳守ください。慢性でつらい症状がみられる方もおられますが、体や手足の保温につとめ、疲れや悩みをためないでリラックスした生活を続けることが大事です。また、一度に沢山食べると胸やけを起こすことも多いので、よく咬みながらゆっくりと食べるようにしましょう。甘いもの、辛いもの、お酒などはとりすぎないようにして、食べてすぐ横になるのはやめましょう。肺や心臓に病変のある人は、息切れをするほどの運動はしないようにしましょう。

*強皮症患者さんの相談窓口<福井大学皮膚科 強皮症メール相談>

当教室では、長谷川教授が強皮症に関するメール相談を受け付けています。当院に通院されていない方で、現在の症状に関して相談を希望される場合は、下記までご連絡ください。なお、診察している訳ではないことから、判断が違っていたり、症状悪化につながるようなことがあっても保証はできませんので、ご了承ください。あくまで一般的なアドバイスにとどまりますが、参考になるようでしたら幸いです。なお、メールをいただく場合は、必ずご住所、電話番号、お名前を記載いただくよう御願いいたします。これらの情報が、特別な理由なしに記載されていない場合には返信しかねます。通常は1週間以内にメールでお返事いたしますが、届かない場合は再度御送りくださいますよう御願いいたします。

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